DimensionalReg’s blog

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本棚の写真

概要

教員の研究室に訪問したとき,院生部屋の他人の机の前を通りかかったとき,彼らの所蔵する書籍や本棚を見るのは楽しい.本記事では自分の本棚の写真を掲載して,そこに映り込む本たちを紹介するものである.

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研究室の本棚

紹介

左から順に紹介する

  • 力学ランダウ・リフシッツの有名な本なので持っていた方が良いのかと思い購入.そんなに読んでいないが必要になる時がいつか来るはず.
  • 量子力学 I・II:学部時代の量子力学の授業の副読書として購入.大学院入試対策として読んだ.二巻の方は摂動論のところくらいしか読んでいない.
  • 線型代数入門:学部時代には別の教科書で勉強したが,大学院に進学する際により専門的に書かれているこの本を購入.進学後,線形代数の知識不足が明らかになりすぐに活用.ジョルダン標準形のところは読んでいない.
  • 線型代数:上で紹介した線型代数入門に書かれていない,外積空間の勉強のために購入した.そんなに読んでいない.
  • 相対性理論:序文が有名な教科書.コンパクトサイズで気に入っている.
  • 多様体の基礎:「多様体の勉強ゼミでもするか」ということで購入したが,ゼミは開催されなかった.まだ読んでいない.
  • 複素関数:場の量子論を勉強し始めて,複素関数の知識が薄いことに気がつき購入.適宜参照したが,通読はしていない.
  • 群と物理:物理の学生向けに書かれた群論の教科書として有名.学部時代にゼミをすることになり購入.通読はしたが,最近読み返していて初見の内容のように感じるところもあった(ツライ).
  • 工学のための関数解析量子力学の数学的なところが気になった時期があり,関数解析の勉強のために購入.読む前に,他のことに関心がうつり読まずに放置.
  • PeskinのQFT素粒子論研究室の修士1年の学生がゼミで使う本.自分は別のQFTの本でゼミをしたので通読はしておらず,主に散乱の計算を参照するために利用している.
  • 量子論の基礎(清水):上で紹介した量子力学の教科書とは毛色の異なる内容が書かれている.サクサク読めて面白い.
  • 統計力学 I・II統計力学の教科書として有名.大学院入試の勉強のために購入した.今でもたまに参照する.
  • 大学演習 熱学・統計力学:院試対策で購入して使用した.全ての問題を解いた人は著者以外この世にいないのではないかと思わせる分量.
  • 数理物理学の方法 上:なんとなく買ったが難しくて読んでいない.
  • 場の量子論(坂本):場の量子論の入門書として人気.通読はしたが,以外とあとで参照することがある.
  • 弦とブレーン素粒子論の学生ならば弦理論は教養として知っていなければということでゼミをやっている.ゼミの本としては適切な難易度・行間・範囲で気に入っている.
  • ゲージ場の量子論 I・II:久後ゲージと呼ばれ有名.一巻の最初のほうとゲージ場の量子化のところのみ詳しく読んだ.二巻にも色々な内容が書かれているので,いつか通読したい.
  • 格子上の場の理論:格子QCDについて知るために購入して読んでいる.
  • ゲージ理論解析力学:上で紹介した久後ゲージの5章を読んでいて,「拘束系の解析力学」がわからなくなったので購入.わかりやすい.

レビュー論文(日本語,素粒子論関連)

概要

本記事では日本語で書かれている素粒子論関連のレビュー論文を紹介する.pdfのリンクが貼られているものと,レビュー論文がまとめてあるサイトのURLがリンクとして貼られているものがある.

一覧

素粒子論関連の修士論文・博士論文(web)
わかりやすく書かれた解説論文として,修士論文や博士論文は重宝される.なぜなら当該分野の知識を仮定せずに,基礎的な事柄から説明してくれているので読みやすいためである.上記のリンクの先には,毎年全国で大量に執筆されているそれらの論文の内,公開を望んだ著者らの修士・博士論文が掲載されている.サイト内を色々調べるとわかるが,とんでもない数のpdfに出会える.このサイトを紹介するだけでも十分だが,自分が読んだことのある他のレビュー論文についてもいくつか紹介しておく.

素粒子論関連の講義録・解説記事(web)
それほど多くはないが講義録や解説記事がまとめられているwebサイト.

場の理論の位相的ソリトンとその役割(pdf)
夏の学校と呼ばれる大学院生向けの研究会では,毎年講師を招いて専門分野についてわかりやすく授業をしてもらう.このpdfはタイトルの内容に関する授業を学生が文章に起こしたものである.トポロジカルソリトンの勉強のために利用した.

トムとベリー(pdf)
量子力学に登場するBerry位相という概念を通して,微分幾何学の外観を理解することができる.

超重力理論についてのノート(pdf)
めっちゃ詳しく長い.通読したわけではないです.

引用数の多い論文 Top5(素粒子理論)

概要

論文の価値は引用数に必ずしも直結しないが,多く引用されている論文は当該分野で注目を集めていることは確かである.本記事では,素粒子理論の分野で引用数の多い論文を上から順に5つ紹介する.

調べ方

引用数の調べ方として,INSPIREが示す引用数の多い順一覧の中から,素粒子理論分野の論文を抜き出す.INSPIREというサイトは,高エネルギー物理学や宇宙物理の論文に関して調べる際に便利なもので多くの人々が利用している.以下で記載している引用数は,この記事を書いた2020/8/2現在のものである.

Top5

第1位(15,834引用)

タイトル:The Large N limit of superconformal field theories and supergravity
著者:J. M. Maldacena
論文誌:Int. J. Theor. Phys., Adv. Theor. Math. Phys.
出版年:1997
URL:INSPIRE

AdS/CFT対応という名でよく知られており,弦理論の第二ブームを巻き起こした立役者である.以降は素粒子理論だけでなく様々な分野への広がりを見せる.

第2位(12,517引用)

タイトル:A Model of Leptons
著者:S. Weinberg
論文誌:Phys. Rev. Lett.
出版年:1967
URL:INSPIRE

電弱統一理論あるいはWeinberg-Salam理論のオリジナル論文である.著者のWeinbergはこの業績で1979年にノーベル物理学賞を受賞した.

第3位(11,263引用)

タイトル:PYTHIA 6.4 Physics and Manual
著者:T. Sjostrand, S. Mrenna and P. Z. Skands
論文誌:JHEP
出版年:2006
URL:INSPIRE

内容をよく知らないので読んだら説明する.

第4位(10,450引用)

タイトル:CP Violation in the Renormalizable Theory of Weak Interaction
著者:M. Kobayashi and T. Maskawa
論文誌:Prog. Theor. Phys
出版年:1973
URL:INSPIRE

小林・益川理論のオリジナル論文である.著者らはこの業績で2008年にノーベル物理学賞を受賞した.

第5位(10,230引用)

タイトル:Anti-de Sitter space and holography
著者:E. Witten
論文誌:Adv. Theor. Math. Phys.
出版年:1988
URL:INSPIRE

引用数第1位の論文で論じられているAdS/CFT対応に関係する論文.詳しい内容は知らないので読んだら説明する.Wittenといえばこの他にも大量の論文を書いており,そのどれもがすごい数の引用がなされいる.

レビュー論文メモ(余剰次元)

論文情報

タイトル:TASI 2004 Lectures: To the Fifth Dimension and Back
著者:Raman Sundrum
arXivhep-th/0508134

コメント

TASIレクチャーのシリーズは良質なレビュー論文が多い.この論文は余剰次元の導入から,これを使ってできることなどを具体的に説明してくれている.場の理論をある程度知っていれば通読できる内容で,知らなくても余剰次元と関連研究に関する基礎的な知識が手に入る.本論文の著者は「Randall-Sundrumモデル」と呼ばれる5次元の重力理論を作った人として有名.初めて読んでから2年ぐらいたった今,再読することで当時理解していなかったことや,ちゃんと読めていなかったことがわかった.

論文メモ(モノポール)

論文情報

タイトル:Concept of Nonintegrable Phase Factors and Global Formulation of Gauge Fields
著者:T. T. Wu and C. N. Yang
論文誌:Physical Review D
出版年:1975
volume:12
issue:12
ページ:3845-3857
DOI:10.1103/PhysRevD.12.3845

コメント

U(1)ゲージ理論モノポールを記述しようとすると,Diracストリングと呼ばれる特異性のある解となる.特異性の原因は,1つの座標だけで記述しようとしたとことろにあり,複数の座標を用いてそれらをつなぎ合わせて全体を覆えば,各座標で特異性が現れなくなる.この思想はファイバー束という数学的な概念と関係しており,本論文はファイバー束を用いて記述できる物理的な対象の例を初めて示したことになっている.具体的にモノポール解を構成し,Diracストリングが取り除かれていることを確認した次の論文も書いている.

タイトル:Dirac Monopole Without Strings: Monopole Harmonics
著者:T. T. Wu and C. N. Yang
論文誌:Nucler Physics B
出版年:1976
volume:107
issue:3
ページ:365-380
DOI:10.1016/0550-3213(76)90143-7

論文メモ(繰り込み)

論文情報

タイトル:Radiative Corrections as the Origin of Spontaneous Symmetry Breaking
著者:S. Coleman and E. Weinberg
論文誌:Physical Review D
出版年:1973
volume:7
issue:6
ページ:1888-1910
DOI:10.1103/PhysRevD.7.1888

コメント

くりこみ・くりこみ群に関する論文として特に有名で,本論文で出てくるポテンシャルは「Coleman-Weinbergポテンシャル」という名前で呼ばれている.いまだに,くりこみの勉強のために読まれている論文だと思う.前半ではmasslessのスカラー場を例に1-loop有効ポテンシャルの計算方法とくりこみ群の計算の説明がなされる.後半が主題で,スカラーQEDやWeinberg-Salamの場合に,1-loopまでの量子補正を加えた有効ポテンシャルの真空が,対称性を自発的に破っているということが示されている.